ドラマ「名もなき毒」の遺言について

おはようございます!

「八重の桜」、「半沢直樹」のお話をたまにしてきましたが、
実は「名もなき毒」も毎週見ています。

人間の持つ毒を扱う、暗くて重いドラマなのですが、
主人公の小泉孝太郎さんが役のイメージにぴったりで爽やかなのが良いです。

小泉さん、毎回周りの人たちの事件や毒に巻き込まれていますね…。

さて、前回の放送で少し気になる点がありました。
毒入りウーロン茶を飲んで死亡した古屋明俊さんの遺言書についてです。

遺言書が机の引出から出てきますが、その文面を見ると、
司法書士としては、これはかなりまずいのでは???、という書き方がされています。

こんな遺言書(自筆証書遺言)でした。

遺言書
遺言者、古屋明俊はこの遺言書により次の通り遺言をする。
不動産を除く一切の財産を奈良和子に相続させるものとする。
(途中省略)
平成・・年・・月・・日
東京都大田区・・・
遺言者 古屋明俊(昭和・・年・・月・・日生)

なお、押印はありませんでした。
封筒に封はしておらず、封印もありませんでした。

いくつか問題がある遺言書です。
問題点を指摘したところで、ドラマのストーリー的には影響がないと思いますが、
気になったので何点か説明させていただきます。

まず、問題があるのは、
奈良和子(古屋明俊の愛人)に「相続させる」と書いてしまっているところです。
奈良さんとは籍を入れていないので、奈良さんは相続人にはなりません。
この場合「遺贈する」と書かなければなりません。

ただ、「相続させる」と書いたところで、遺言自体が無効になるわけではありません。
相続人でない者に対して「相続させる」との遺言をした場合は相続の効力は生じ得ず、
遺贈の効力が生じるものと解されています。

次に、遺言者の押印がありません。

これは大問題です。
遺言書には、氏名の自署に続けて押印しなければなりません(民法968条1項)。
遺言者の押印を欠く自筆証書遺言は、

当該自筆証書遺言中に遺言者の押印と同視し得るものがあるなどの
特段の事情のない限り、無効というべきです(東京地判平12.9.10)。

なお、使用する印については、特に制限はなく、
実印が望ましいですが、認印でも良いと解されています。

さて、封筒に封はしておらず、封印もありませんでしたが、
封入や封印は自筆証書遺言の要件ではないので、なくても差し支えありません。

ということで、結論を言いますと、この遺言書は無効です。

法的には効力がないものですが、
ドラマでは、古屋明俊さんの娘や孫と愛人の奈良和子が、
遺言書の存在を基にこれから誰が毒殺したかについて色々争いそうです。

遺言書ですが、今回のドラマのようにせっかく作っても無効にならないように、
是非とも専門家に相談されることをお勧めします。